鳩森八幡神社

鳩森八幡神社


八幡神社(鳩森八幡神社)は、御祭神に応神天皇・神功皇后をお祀りし、千駄ヶ谷一帯の総鎮守として村民の崇敬を受けた神社である。別当寺は、真言宗の髙雲山端円寺である。 境内には都の有形民俗文化財指定の富士塚があり、樹木は区の保存林に指定されている。『江戸名所図会』によれば、大昔、此の地の林の中にはめでたいことが起こる前兆の瑞雲(ずいうん)がたびたび現れ、ある日青空より白雲が降りてきたので不思議に思った村人が林の中に入っていくと、突然白鳩が数多、西に向かって飛び去った。この霊瑞(れいずい)に依り 神様が宿る小さな祠(ほこら)を営み鳩森『はとのもり』と名付けられた。貞観2年(860年)、慈覚大師(円仁)が関東巡錫の途中、鳩森のご神体を求める村民の強い願いにより、山城国石清水(男山ともいう)八幡宮に宇佐八幡宮を遷座し給うた故事にのっとり、神功皇后・応神天皇の御尊像を作り添えて、正八幡宮とし尊敬し奉ったと伝えられている。なお、神社の表門の前が将棋会館、表門前の道は鎌倉街道と呼ばれ青山の原宿から八幡宮を経て大窪(早稲田)、板橋への痕跡が残っている。

千駄ヶ谷八幡宮【江戸名所図会】

此辺(このへん)の惣鎮守(そうちんじゅ)として例祭は九月廿七日なり 別當は真言宗髙雲山端圓寺と号(なづ)く
鈴懸松(すずかけまつ) 門前に松の老樹有り寛永の頃 大樹 此地に御放鷹(こほうよう)の時 御鷹の鈴此松の枝にかか里(り)しとなり 故に名とすと 社記云(いわく) 往昔(むかしむかし) 此地(このち)深林(しんりん)の中(うち)に時として瑞雲(ずいうん)現(げん)じける 又或時(あるとき)碧空(へきくう)より白氣(はくき)降りて雲上に散を村民怪(あやし)むて彼(かの)林の下に至るに忽然として白鳩(しろはと)数多(あまた)西をさして飛びされり 依って其霊端を称し小詞を営み名つけて鳩森(はとのもり)という 貞観二年(860年)慈覚大師東國(とうこく)遊化(ゆうけ)の頃 村民等大師に鳩森の神躰を乞求む 依て宇佐八幡宮城州鳩の嶺に移りたまう 古(いにしへ)を思いて 神功皇后 應神天皇 春日明神等の尊躰を作り添(そえ)て正八幡宮と崇(あや)めたまう 遥(はるか)に後(のち)久寿年間(1154-1156年)渋谷正俊領地に鎮座の御神なるを以て 金王丸生前随身の本尊恵心僧都の作の弥陀如来の像を本地佛とし社(やしろ)を造営して此地の生土神と称し奉りしより霊應(れいおう)は照々として日々新なり 南尚亭云く 當社の前路は鎌倉街道の旧跡として今も鎌倉路と字(あざな)せり 青山の原宿より此地をへて大窪へかかりしんとて北条家分限帳島津孫四郎所領の中に千駄ヶ谷の名有り

将棋堂


昭和61年(1986年)1月、社団法人日本将棋連盟(当時の会長 大山康晴重十五世名人)より、山形県の駒師 香月氏の製作による高さ一米二十糎の欅製の大駒が奉納された。この縁により、同年11月に将棋の技術向上を目指す人々の守護神とし、更に将棋界の繁栄を願って、日本将棋連盟と神社が協力し、この大駒を納める六角の御堂が建立された。御堂の六角は天地四方を表わし、屋根の上の飾り金物は将棋盤の足の形、つまりくちなし(梔子)の実の形をしている。くちなしは口無しに通じ、助言無用の戒めからきていると古くから言い伝えられている。室内に安置された大駒は、御影石の将棋盤の上に立ち、その奥に氏神の八幡神が祀られている。毎年年頭に、この御堂の前で祈願祭が行われている。将棋上達を祈願する人は、いつでもその夢を絵馬札に托して奉納することが出来る。参拝者は棋力向上の願いが叶えられ、よろず勝運に恵まれると言われている。

平成6年(1994年)12月吉日
鳩森八幡神社、日本将棋連盟

甲賀稲荷社


甲賀組組屋敷の武士等が崇敬していた甲賀稲荷社の御祭神は宇迦之御魂神であり、かつて青山権太原の御鉄砲場付近に鎮座していたが、明治18年(1885年)に青山練兵場設置のため本境内に遷座、合祀された。昭和20年(1945年)5月の戦災で社殿を喪失、本殿の中に八幡大神、諏訪大神とともに祀られていたが、復興を望む声が高まり、昭和45年(1970年)欅造りの社殿が完成し、遷座された。

神明社(千駄ヶ谷大神宮)


神明社(正式には神明神社)は、天照大御神を主祭神とし、伊勢神宮内宮(三重県伊勢市)を総本社とする神社であり、日本全国に約5000社あると言われている(伊勢信仰)。大神宮として青山権田原(あおやまごんだわら:現港区元赤坂二丁目)にあったが、明治41年(1908年)11月八幡神社の末寺になり境内に鎮座された。

 

 

【参考文献】
1)鳩森八幡神社
2)Wikipedia 八幡神社(渋谷区千駄ヶ谷)
3)Wikipedia 神明神社(Wikipedia)
4)江戸名所図会 巻之三 天璣之部 第九冊

 

【アクセス】

JR総武線 『千駄ヶ谷』駅下車 徒歩5分
地下鉄都営大江戸線 『国立競技場』駅下車 徒歩5分
地下鉄東京メトロ副都心線 『北参道』駅下車 徒歩5分